Lesson3-2 「片付け」「収納」「整理」「整頓」

「片付け」と「収納」

前回のLessonでは「片付け」に使われる言葉の微妙なニュアンスの違いを理解する必要性を解きました。今回は、この講座で使われる「片付け」とよく似た言葉について解説を行います。

まず、本講座のタイトルにも使われている「片付け」と「収納」について見ていきましょう。セットで使われることの多い「片付け」と「収納」にも微妙なニュアンスの違いがあります。

片付け

辞書的には「物を適当な場所にきちんと納める」「整理する」「物事を処理する」といった意味合いになります。「片付け術」を標榜する本が多いのは、この一言でお部屋の掃除や不要なものの整理整頓などをまとめて説明できるからですね。

この言葉の本来の意味合いは「片側に寄せる」ですが、長年使われ続ける内に意味は変容してしまい、いつのまにか「綺麗に納める」とか「納めるべき場所に納める」といった意味合いが付与されるようになりました。

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語源に寄り添えば「不要なものを押し入れに放り込む」だけでも片付けたことになってしまいますが、それでは子供の屁理屈と同じですね。

収納

辞書を引けば「中に入れておく」「しまっておく」などの意味が出てきます。箪笥や物置に「収納する」といった形で、言葉の前に入れておくべき場所がくっついて来るのが「片付け」とは異なる特徴と言えるでしょうか。

この二つの言葉の微妙なニュアンスの違いは次のように説明できます。

本来あるべき場所に「移動させる」のが「片付け」で、本来あるべき場所に「入れる」のが収納。

子供に「お片付けをしましょう」と言う時は、この意味を念頭に置いておく必要があります。使った玩具をしまうべき場所は「押し入れ」や「棚」「物置」ではありません。そのものが「本来置いてあった場所」です。元の場所に正しく移動させることが片付けなのです。

一方で、収納とはその場所の中に入れる動作のことですから、押し入れや物置の中にものをしまうのも収納ですし、机の中や食器棚の物入れに入れるのも収納です。収納術と言った場合は「効率よく特定の入れ物や棚の中に物を収める方法」を意味し、片付け術とは収納すべき場所・あるべき場所に移動させるものだ、と考えると分かりやすいでしょうか。

「収納」によってあらかじめ場所を決め、物を適切な場所に移動させることで「片付け」を行う。このような意識をもって言葉を使い分けていくことで、今自分が行うべきことは「収納」(片付けのベースづくり)なのか、「片付け」(本来の場所に戻すという日々の習慣)なのか理解できるようになります。

例を挙げれば、買ったものを適当に部屋の隅に置いている方は「収納」が出来ていないということですし、使ったものを元の場所に戻していない方は「片付け」に失敗しています。片付け術の根本は、「収納」の基礎と「片付け」の習慣を作ることにあると理解していただければよいでしょう。

「整理」「整頓」

片付けと収納のように、整理と整頓にも微妙なニュアンスの違いが存在します。

整理

辞書を引けば「乱れた状態にあるものを整える」「無駄なものを処分する」といった意味が並んでいます。乱れた状態は具体的なものにも抽象的なものにも適用できる考え方ですので、「書類の整理をする」「気持ちの整理をつける」といった使い方が出来ます。

乱れた状態にあるものを整えるという意味でしたら、片付けと同じように使ってしまっても構いません。しかしそれでは片付けとの意味の違いが明確にならず、わざわざ「整理術」という風に銘打つ意味が薄れてしまいます。したがって、多くの整理術の本では、「無駄なものを処分する」方の意味に着目することが多いようです。

つまり、今までのLessonでも何度か触れて来ましたが、必要なものと不要なものを分け、捨てるか残すかの選択を行う。すなわち取捨選択こそが「整理」の本領というわけです。

整頓

これも「片付け」とほぼ同じ意味合いで使えますし、「整理」と合わせて「整理整頓」と使う場合があります。「整理」との違いとして重要なのは、「頓」の字に「その場にとどまる」や「落ち着く」といった意味が含まれていることです。

頓には「頓知」(とんち、即興の知恵や機転)のように、「すぐに」(英語の”soon”ですね)という意味、「頓服」(小分けにせず一度に薬を飲む)のように「一回、一度」の意味、そして先ほど挙げた「整頓」のように「その場にとどまる」といった意味があります。しかし、「整理」のように不要なものを捨てる・取り除くといった意味はありません。

以上のことから、「整理整頓」とは、「整理」によって不要なものを捨てた後に、「整頓」によってものを本来の位置に整える、という意味合いになります。たとえば事務仕事で書類の整理整頓をするように命じられた場合は、まず書類を必要なものと不要なものに整理し、必要な書類を取り出したり閲覧したりしやすいようファイリングするなどして整頓する、といった手順で物事を進めればよいのです。

同じようで微妙に異なる言葉のニュアンスをきちんと覚えておきましょう。