余計なものを捨てるのは損?
最初に常識的な考え方についてご説明します。以下の問いと向き合ってみて下さい。
部屋を片付けて余計なものを捨てると金銭的な余裕が生まれるのか?
普通に考えれば答えはNOです。あなたの部屋に存在するものは、本来ならお金なり時間なりのコストをかけて手に入れたものであるはずですから、それを捨てるのは入手時の支払い分のお金なり時間なりを捨てるのと同義と言えます。したがって、片付けとゴミ捨てを続ければ続けるほど、部屋の整理を極めれば極めるほど、お金を捨てていることになります。
これが常識的な考え方です。
片付け術や収納術の世界では、その考え方は否定されています。たとえば、
- 一度読んでためになった本や雑誌
- 滅多に使わない来客用の食器
- 来年着るかもしれない洋服類
これらを捨ててみると考えてみましょう。
本や雑誌を捨てる
まず、本や雑誌、CD/DVDの類ですが、これらに払ったお金は基本的には「体験」に対価を支払っていると考えましょう。映画館で映画を観たら手元にはせいぜいパンフレットくらいしか残りませんが、映画を観たという確かな体験が残ります。それと同じように、本や雑誌なども一度読んだらどうしても必要な場合を除いて捨てたり売ったりした方が良いのです。
読まないのに置いてある本などは、単にスペースを取るだけの負債であり、捨てない限りその本を保管するためのコストがかかり続けます。「いつか読むかもしれない」と思って段ボールに入れておいても痛むだけですし、いざという時は図書館なり電子書籍なりで対応可能です

一冊千円の本を読んだとしましょう。捨てない場合は、その本のためのスペースをずっと潰すことになります。図書館にも全く置いていないような貴重な古書で、再入手には何千円も必要である、という場合はまた別ですが、普通の本や雑誌なら再入手のコストもさほどではありません。
来客用の食器を捨てる
来客用の食器類も、基本的には自分や家族が使うものの予備があれば十分です。「親戚が必ず月末に尋ねて来る」「毎日のように様々な友人が部屋を訪れる」ような状態でもない限り、急な来客のために普段は使わない食器を常に用意しておくのは、本同様に無駄な保管コストがかかります。
どうしてもという場合は来客直前に急いで食器を買ってくることで対応することもできます。さすがに百円ショップで買うのはあまりにけち臭いのでおすすめしませんが、ちょっとした雑貨屋さんの食器コーナーで適当に見繕っても案外何とかなるものです。
もし来客用の食器を捨てずにいた場合はどうなるかと言いますと、普段は使わないお皿やカップが棚の一角を占めることになります。大きい家に住んでいて、キッチンも広く、食器棚に充分な余裕があるのでしたらそれでもいいでしょう。ですが小さな賃貸の部屋でわずかなスペースに食器類を詰め込んでいる場合、そのスペースはとても貴重です。
来客用の食器を急いで購入した場合も、捨ててしまって構いません。勿体ないと感じるかもしれませんが、そのスペースに別のものを置いた方が有意義である可能性が高いのです。
来年着るかもしれない服を捨てる
服は高い買い物ですから、捨てる踏ん切りがつかないことも多いでしょう。しかしながら流行は毎シーズン変化します。外出用のアウターのように「何年も継続して使う」という意図をもって買った服でない限り、次の衣替えまで律儀に衣装戸棚や衣装ケースの奥にしまっておく必要はありません。よっぽど気に入った服でもない限り、今年の冬に着た服を来年の冬も着るという保証はないからです。
また「安売りで買ったものの滅多に着なかった服」などがある場合は、これも捨ててしまいましょう。自分でもあまり気に入っていない服はなかなか着ないものですし、他人からの評価も決して高くはありません。タンスの肥やしとして保管コストを支払い続けるくらいなら古着屋に売るべきでしょう。
なぜ服に関して積極的に捨てることを推奨しているかというと、服は「捨てづらい」ものだからです。一着一着それなりの値が張りますし、高いお金を支払ったものを捨てるには抵抗があり、まだ着るかもしれないという未練を捨てきれません。しかし、だからこそなのです。だからこそ、タンスの中が「着ることのない服でぱんぱんになっている」という方が大勢いらっしゃるのです。
「来年も着るかもしれない」と思って残した服が五年、十年と積み重なると、洋服ダンスがいかに広かろうとすぐにパンクしてしまいます。「絶対に来年も着る」という意志がない限りは捨てるなり売るなりしなければ、着ない洋服のために莫大な保管コストを支払い続けることになります。それだけではなく、そのような「着るかもしれない」服に邪魔をされて「着たかった服」が見つからず、結局クローゼットの取り出しやすい場所に置いている服を着ることに……なんてナンセンスな結果に終わることも多々あるのです。
よほどおしゃれに熱心な方でもない限り、「服は積極的に捨てる」と考えた方が、結果的に保管コストもかかりませんし、一着一着の相対的な価値が上がっていくものです。
余計なものを捨てることで買い物を控える
このように、普段使わないものを積極的に捨てた場合、目には見えなくとも保管コストが削減できて、結果的に金銭的な余裕につながります。しかし、皆さんが本当に知りたいのは「見えないコストの削減方法」ではなく、「見えるコストの削減方法」でしょう。見えないところについた贅肉より見える贅肉を削る方が楽しいですからね。
では、見える部分はどうかといいますと、こちらのコストも片付けや収納術を身に着けることで削減可能なのです。その理屈は至って単純です。
捨てる/捨てないの判断がシビアになれば、不要なものを買わなくなる
これに尽きます。
日用品などは特にそうですね。普段から「これは不必要だ」と思って捨てているものであれば、本当に必要なとき以外は購入しなくなります。滅多に使わないアクセサリー、滅多に調理に使わないのに「特売だから」という理由で買ってしまいがちな調味料、着ることのなかった洋服がたくさん詰まった福袋……このような「つい買ってしまいがちなもの」から自然と遠ざかれます。
本当に無駄な買い物をしなくなるの? と疑問を抱く方もいらっしゃるかもしれませんが、これが思った以上に効果的なのですね。お得に見えるものが安値で販売されていたとしても、近付いてよく見たら普段捨てているものだった……そういう時に「どうせ捨てるのだから」と購入意欲が失われてしまうのです。
部屋を片付けるために物を捨てるとき、欲望や執着も一緒に捨てている。そのように考えるとすっきりするでしょう。