Lesson2-1 片付けの生み出す三つの余裕

片付けは全くデメリットのないテクニック

なにかを得るためには何かを犠牲にしなければならない。

そうお考えの方も多いかと思います。実際、その理屈は間違っているわけではありません。人間が何かを手に入れるためには、お金なり時間なり相応のコストを支払う必要があるものがほとんどです。

事情は片付け術・収納術であっても何ら変わりません。片付けには技術的な側面がありますから、他の技術と同様に、習得するためのコストが発生します。習得するまでの時間にせよ、人から習うためのお金にせよ、支払わずに手に入れることはできません。

しかし、片付け術や収納術は、維持するためのコストがかかりません。

技術を維持するためのコスト

医師免許や調理師免許のような国家資格であれば、資格取得と同時に守るべき義務が発生します。医者は患者の情報をきちんと守らなければなりませんし(病状などを他人に話すわけにはいきません)、調理師として開業したら常に店内を衛生的に保つなどの維持コストが必ず必要になってきます。

もちろん、そのような資格を手に入れるメリットが計り知れないほど大きいのもまた確かなことです。資格を持ち続ける、現状を維持するために勉強を続けるなどのコストを支払ったとしても、それに見合うだけの見返りが得られます。金銭的に報われることもあるでしょうし、他者から人望を得ることもあるでしょう。

それらと比較すると片付け術や収納術によって得られるメリットは些細なものです。その気になれば片付いていない部屋でも生活することは出来ますし、ちょっとしたお金を払えば部屋の片付けを代行してくれるサービスもたくさんあります。物を捨てることで居住スペースの広さが2倍になったとしても、家賃が半額になるわけではありません。

その代わりデメリットらしいデメリットも全くと言っていいほどないのです。

メリットと維持コスト

片付け術や収納術を学べば、

  • 不要なものを捨てることができる
  • 部屋を広々と利用できる
  • 自宅に躊躇いなく友人を招けるようになる
  • 掃除しやすくなり、衛生的な状態を保ちやすくなる
  • 他人に片付け術を伝授することができる

といったささやかな、しかし軽視はできない程度のメリットが得られるのですが、片付け術や収納術を身に着けたあとは「忘れないようにする」くらいしか維持コストがかかりません。しかし部屋の片付けは習慣的にやるものですから、自転車に乗る技術と同じように、一度手に入れたらそうそう忘れるものではありません。

医学や子育てのように「新しい発見があれば学ばなければならない」「古い知識を持ち続けると却って害になる」といったものであれば、常に最新の情報を追い続けなければなりません。

部活の指導者を例に説明しましょう。昔の常識は「運動中に水を飲ませてはいけない」でしたが、最近ではこまめな水分補給の大切さが分かって来たこともあって、学生の健康のために昔の常識を捨てる必要が出てきました。今では新しい常識を有していない部活指導者は非難の対象となってしまいますし、練習中に必ず水分補給が出来るように工夫をします。

しかし、片付け術や収納術はより効率的な方法を追求するものですから、古い考え方が害になることは稀です。新しい考え方を学ぶにしても、学ぶ際の時間やお金は必要ですが、それを維持するためのコストは不要です。身に着ければ身に着けるほど自身の片付け収納術が磨かれ、生活がより快適になっていきますが、それに伴うデメリットはありません。考えてみれば「部屋を綺麗にする」方法ですから、デメリットなど生じるはずもないのですね。

片付けによって手に入る三つの余裕

では、片付けによって手に入るメリットとは、具体的にどのようなものなのでしょうか。「部屋を片付けるメリットを挙げて下さい」と言われても、多くの方は「暮らしやすくなるし部屋が広くなるし……」くらいの直接的な効果――空間的な余裕しか挙げられないでしょう。

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実際には部屋を広々と使えるようになるだけでなく、そのことから様々なメリットが生じます。本講座では片付け術を習得することによって生じるメリットを以下の三つに分類しています。

  • 時間の余裕
  • 金銭的な余裕
  • 心の余裕

時間の余裕

時間の余裕についてはLesson2-2で説明します。片付けは部屋を綺麗にするために一時的に自由時間を削って身体を動かす必要がありますが、ものを適切な場所に置くことで「探す時間」「移動する時間」を節約し、「緊急時のタイムロス」を削減することが出来るようになります。

金銭的な余裕

金銭的な余裕についてはLesson2-3で説明します。片付けや収納のテクニックを身に着けると、「必要か不要か」の判断を今までよりシビアに行えるようになり、結果的に買い物にかける総額が浮くなどのコストダウンを図ることができます。

心の余裕

時間の余裕と金銭的な余裕、そして「部屋が片付いている」「自分はいつでも部屋を片付けることが出来る」という自信から心の余裕が生まれる、という話をLesson2-4で行います。

心の余裕というものは時間や経済面に余裕がある状態にならなければなかなか発生しませんし、「他人より優れている」という優越感や、「急な来客にも対応出来る」といった対応力がないと常に不安を抱えることになります。片付け術は、こういった不安の解消にも有用です。

では、それらの「余裕」について詳しく見ていきましょう。